今さら検証したところで、たいして意味がないことは分かっているが、やはり気になるのがいつ、どこでウイルスをもらってしまったのかということだ。
「コロナかもしれない」と思い始めたのは、以前も書いたが、トゥストラに二回目に訪れた時の翌朝に感じたのどの痛みがきっかけだった。この時はまだ、ホテルの空調のせいでのどが痛いのだと思っていた。
ところが、その後、他の町へ移動してものどの痛みが取れない。異なるホテルに泊まってもまだのどに違和感がある…
という段になって初めて、これはもしかしてコロナ?と思い立ち、持っていた簡易テストをやってみたというわけ。
その翌日、近くの大き目な街でPCR検査を受けることになるのだが、よくよく考えてみると、トゥストラで覚えたのどの痛みよりも前に、「あれはもしかしてコロナの症状だったのでは?」と思うようなことはあった。

まず、コミタンやサンクリストバルで感じた疲労感。
この辺は標高が高いため、そのためにちょっとした運動でも息切れがしてしんどいのだと思い込んでいた。
年もせいもあるだろうと、いささかショックに感じてもいたのだ。おりしもちょうど月経と重なっており、高山病に加えて貧血か、アンラッキーだな、くらいにしか思っていなかったのである。
コミタンは標高1600m、サンクリストバルは2000m、その周辺の小さな村々は2300mという場所で、私たちは毎日15~20㎞くらい歩いていた。
それで疲れを感じない方が不思議だといってもよいと思うが、極めつけは上り坂を上っているとき、途中で胸が痛くなり、それ以上登れなくなったこと。
私は小さいころから不整脈を指摘されたことがあったので、てっきりその胸の痛みは心臓だと思っていて、肺だとは夢にも思っていなかった。
しかし、よく考えてみたら、これらはコロナの初期症状に合致している。
―――とここまでは、以前にも書いたので覚えていらっしゃる読者さんもいるだろう。
コミタン滞在あたりで、すでにコロナウイルスに感染していたことは間違いないと思う。
だが、さらにいろいろ思い出してみると、実はそれ以前にも「もしかしてあれはコロナ?」という瞬間がある。
どこの町でだったのかはすっかり忘れてしまったが、夕食を食べた後に吐き気を覚えることがあった。
私だけではなく夫もそうで、でも食べるものが普段と違うし、チーズなど消化に良くない食品を口にすることも多かったので、それほど深刻に取らなかった。
でも、最近コロナの症状についてもう一度よく調べたり読んだりしているうち、下痢や吐き気を症状として訴える人もいるということを知った。
私たちの場合、下痢はなかったが、食べた後の吐き気は何度か感じたのを覚えている。そのとき食べたものに何か問題があったのだろうくらいにしか受け取っていなかったのだけれど。
もし、それがコロナウイルスによるものだったとすれば、かなり早い段階でウイルスを取り込んでいたことになる。
これまでもコロナ流行後の海外旅行は経験してきており、メキシコ以前は感染したことがないため、今回の旅はいったい何が違っていたのだろうと思い返してみる。
すると、今回は以前よりもはるかに行動範囲を広くしたこと、そして公共交通機関を使う頻度が高かったことに思い当たった。
自由旅行ということで、コロナ以前のバックパック旅行と同じくらいの気軽さで、乗り合いタクシーやローカルのバスを利用した。
もちろん、マスクはつけているし、周りの乗客もほとんどがマスク着用していたが、クリスマス時期の繁忙期。中にはゴホゴホと咳をする乗客もいた。
できるだけ4時間を超える移動は避けてはいたものの、交通機関を利用しない日はないというくらい毎日何かしらに乗っていた。
その他にも、ホテルに残留していたコロナウイルスを体内に取り込んでしまった可能性もないことはない。
ホテルチェックインのたびに、手に触れる箇所を中心に除菌シートで拭きまくっていたけれど、タオルやシーツ(これらに関しては洗ってルームメイキングをしたスタッフがウイルスキャリアだった場合、ウイルスはそのまま付着した状態だと考えられる)、壁などをすべて洗浄することは不可能である。
しかしながら、やはり可能性が高いのは交通機関だと思う。
ギリシャやイギリスでも、複数のホテルに宿泊したし、チェックイン時に行っていた気休めとはいえ感染防止方法は同じように行っていたから。
コロナウイルスが体内で増え始めてから発症するまでの間の潜伏期間は、2~14日といわれており、かなり個人差が大きい。
多分、私たちのようにあとから思い出せばあれはコロナだったのかも?という症状があるため、報告される潜伏期間も幅が出てしまうのだろう。
食後の吐き気がいつから始まったのか、もうはっきりとは思いだせないのだけれど、旅行期間のかなり初期だったことは間違いない。
とすれば、空港や飛行機内でウイルスをもらってしまった可能性もある。
とにかく、昨年の冬から流行り始めているオミクロン株のために、私たちの周りでもコロナ感染経験者が激増している。コロナにかかったことがない人を探すのが難しいくらいだ。
こうやって、コロナも徐々にインフルエンザや風邪のように扱われることになっていくのだろう。
そう考えると、私たちがコロナに感染するのも時間の問題であって、こうしてメキシコで「軽めのコロナ」を経験したことは、かえって良かったのかもしれないとも考えるようになった。
カナダの田舎に引きこもっていれば、コロナに感染するリスクはほとんどないだろうし、でもそうなるといつまでたってもコロナに対する免疫力は付きにくいばかりだろうから。
メキシコ旅行においては、夫が最も行きたがっていたパレンケに向かうと決めたとたん、コロナ感染が発覚し、旅行予定を急遽変更することになったことは残念だった。
でも、そもそもメキシコに行った理由が、カナダの厳しい冬から逃れたかっただけであり、ぶっちゃけ行先は暖かいところならどこでもよかったのだ。
だから、ひとかけらの雪もないメキシコで5週間という時間を過ごすことができた、それだけで十分満足。
たとえ、自己隔離で少々不自由でも、メキシコの熱風と燦燦と降り注ぐ日光と、そして「ブエノスディアス」と声をかければ「ブエノスディアス」と返事が返ってくる陽気でフレンドリーなメキシコ人を思い出すとき、「楽しかったなあ」という印象でいっぱいになる。
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